寄稿:3月8日に仕事を休めなかったワグナーの話

Wake Up, Girls!

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今回寄稿させていただきます、ツカサと申します。

2019年3月8日は何の日だったか知っていますか?Wake Up, Girls! FINAL LIVE 〜想い出のパレード〜が開催された日…これはその日「解散する推しの最後の舞台の日」に仕事を休めなかったワグナー…WUGのオタクの話です。

 

あの日つかんだのはSSAへの切符と…

Wake Up, Girls!ファイナルライブがWake Up, Girls! FINAL TOUR – HOME -~ PART II FANTASIA ~ の千秋楽となる、横須賀夜公演で発表された時の興奮は今でも忘れることができません。それまでの公演とは違うタイミングでスクリーンが降りてきた瞬間のどよめきも。これまでの活動を振り返る映像が映し出され、そして流れたメッセージ。

 

「もしも 私たちの想いが届くなら」
「Wake Up, Girls!を愛してくれた」
「全てのワグナーさんともう一度ライブがしたい」
「Wake Up, Girls!」「FINAL LIVE」「in」
「さいたまスーパーアリーナ 2019年3月8日(金) 開催決定!」

 

周りの様子は覚えていません。普通のアイドルなら大舞台に出る推しに「おめでとう!」と伝えるところだったのかもしれない。それでも自分がガッツポーズして「よっしゃあああああ!!!!!!!」って心から叫んでいたことだけは覚えています。なぜ叫ぶくらい嬉しかったのか、それは僕もWUGちゃんと同じライブの参加者という意識があったためだと思います。

僕たちワグナー同士の、そしてWUGとの一体感はすさまじいもので、WUGちゃんとワグナーの世界がたしかに会場にはあった。
「WUGちゃんがSSAに行ける!」「だからWUGちゃん、おめでとう!」ではなく、
「WUGちゃんと俺たちがSSAに行けるんだ!!」という気持ちがここにありました。
僕らがWUGちゃんの一部であると思えるほど近くに感じられているから、WUGちゃんの目指していた聖地SSAに行けるのは当然の喜びであったのかもしれない。

ツアーで終わりじゃない。僕はSSAにWUGちゃんを観に行くのではない。SSAへWUGちゃんと一緒にライブを作りに行けるんだ。最高の卒業式を一緒に行うんだ。約束の地で。

昔読んだマンガに書かれていたのは、ガッツポーズは勝者が何かをつかむ仕草であり、その瞬間にだけつかめる何かがそこにはあるということ。そして賞状やトロフィーはそれを証として形にした存在であると。

あの時の僕は確実に何かをつかんでいました。あの場所であの瞬間にだけつかめる何かがそこにはありました。

このとき掴んだものはきっと「SSAへの切符」と、もうひとつ。それは「WUGちゃんとワグナーで掴み取った勝利」

SSAを決めたのはWUGちゃんではなく、周りの大人の人たちだと思っています。でもその決め手になったのは毎公演ごとに前の公演を超えるパフォーマンスを行い、加速的な進化をしていったWUGちゃんの力、そしてワグナーの熱量であったと考えています。これまで当日券の出ていたライブチケットが完売していたりとか、舞台の円盤が発売されたりなど、目に見えるものの効果も大きかったはずだから。

ふつう勝利とは対戦相手がいてその相手を負かして自分が勝つ事を指すけれど、でも僕が、僕らが勝ち取った勝利は誰も負けない勝利だったんじゃないだろうか。

そのライブ…横須賀でのpart2最後の公演が終わった後に点灯できなくなってしまったワグナーブレードは「僕がつかんだものは真実だ」と証明してくれるものになったんだと思います。

仕事が休めない!?

ファイナルライブが発表されてから真っ先に休みを取りに行きますよね、皆さんそうされたかと思います。僕もそうしました。申請したのは1月中旬。3/8〜3/12まで休みを入れて普通に受理されました。

…ですが2月のある日、出社して自分のデスクに行くとそこには置かれた紙が。その中で踊る絶望的な文字列が目に飛び込んできたのです。要約すると「3月8日に試験やるよ、全員参加ね。試験は1時間程度だけどその前に勉強会も開いてあげるから参加してね」との事。

上の人的には仕事で必要な資格試験を休日にやらせるのは可哀想、勤務時間に勉強も試験もさせてあげようって気配りだと思うんですが…。その時の僕にとっては余計なお世話です。

 

このお知らせを目にした時色んなことが頭をよぎりました。「3日くらい前から体調崩しはじめて8日は休むか?」「たしか醤油一気飲みすると体温上がるんだっけ?」「いや、もともと8日に休みの希望出してしまった、これで病欠したら怪しまれる?」「そもそもこの試験受けられなかったら永遠に響くやつじゃん…」等々。

本当に悩みながら考えたのですが、「仕事は休めない」って結論に至りました。でも、SSAは、「解散する推しの最後の舞台の日」だけは絶対に諦めることができません。

調べたところ名古屋駅からさいたまスーパーアリーナまでは2時間30分程度あれば到着できるようです。「定時(17時30分)でダッシュすれば20時過ぎにはSSAに到着できる…?ライブが3時間としても90分は見られるな?」…ということで”定時ダッシュ”で地元、愛知県からSSAに向かうことにしました。

正直なところを言えば、公開リハーサルの頭からライブを見たかった!でも幸いなことにライブ自体は市原〜仙台の参加した27公演で後悔のないくらいたくさん見ることができていました。なのでSSAでは最悪でもタチアガレ!と極スマとPolarisと言の葉 青葉とTUNAGOと新曲4曲さえ見られれば良いと思ってました。多いようですが、どうしても!というところです。

僕の Real Time Attack がはじまる

RTAとは(Real Time Attack) の略です。ゲームの遊び方の一種として生まれた言葉ですが、今回は僕が挑むのは覚悟を決めた人間が挑む時間との戦いです。仕事終わりにSSAまで最速で辿り着くと決めたらやることはシンプルでした。綿密なプランニング、準備です。

  1. 走りやすい革靴とインナーソールを買っておく
  2. 新幹線のチケットを買っておく
  3. カバンにブレード、タオル、ビブス等ワグナーとしての装備を忍ばせておく
  4. 朝、職場に着いたら真っ先に定時に帰る段取りをしておく
  5. 休憩中、終業時刻に職場にタクシーを手配しておく
  6. 仕事が終わり次第、あとは全力で走る。

…物の準備から細々としたものも含めて色々と準備しました。

いざ3/8ファイナルライブ当日、名古屋駅で新幹線に乗りたい気持ちを殺してなんとか職場に着きました。その日は金曜日だったので、午後には「今日飲みに行く?」みたいな誘いもチラホラありましたが「ごめん、時差オープンのパチ屋行く」(大嘘)とか「女の子と会う約束してる」(あながち嘘じゃない)とか適当な理由をつけて断っていました。

 

綿密な準備が効いたのか、定時少し前には職場を離脱することに成功しました。受付さんと警備員さんの間を走り抜けて、呼んでおいたタクシーに乗り込み、名古屋駅までかっ飛ばしてもらう。駅に着いたら「お釣りはいりません!」とお金を多めに置いて新幹線の改札口に即ダッシュ。なんとか17時55分の新幹線に乗り込みました。

息を整えてツイッターを開くと公開リハの感想や、SSAの写真、最後のライブ前のお気持ち表明ツイート、既に泣いてる姿が見えるツイートがTLにはあふれていました。

 

…いいなぁ羨ましいなぁって気持ちもありましたが、覚悟はしていた事です。この時はそれよりもRTAがおよそ計画通り進んでいる安心感とライブへの気持ちの高まりの方が勝っていました。

時刻が開演時間の18時半に近づくと1人また1人と「行ってきます」「見届けてきます」とTLからいなくなりました。それまでスクロールすればするだけ新しいツイートが表示されたTLが嘘のようでした。

その瞬間にはっきりと、ああ俺は間に合わなかったんだなぁと実感。Googleマップの示す現在地は静岡県の大井川付近、東京駅まであと1時間はかかることを示していました。

それでも良かったなってこともあったんです。それがこのツイート!僕の推し…亜咲花ちゃんがPolarisの歌詞を呟いていたんです。時刻は19時9分、ワグナーは絶賛ライブ中。このツイートを真っ先に見られたのは少し嬉しかったです。

それから東京駅に着いて乗り換え、ついに20時11分にはさいたま新都心駅に到着しました。
そしてここからが僕がどうしても文章で残しておきたかった出来事です。

20時11分、さいたま新都心駅到着

さいたま新都心駅に着く前から1分が10分にも感じられるほど緊張していました。気を抜いたら胃酸が逆流するのではないかと思うくらいの緊張です。それでも刻々と電車はさいたまスーパーアリーナに近づいていきました。

そしてついに電車がさいたま新都心駅のホームに入ると乗客の誰よりも早く電車を降り、階段を2段飛ばしで駆け上がり、改札を通ったらすぐに左に曲がってSSAを見据えます。manacaは胸ポケットに、内ポケットからはチケットを取り出し、人生で1.2を争うくらいのスピードで入場ゲートへ向かいます。

 

周りの人から見ればスーツで汗だくで死にそうな顔して全速力で走っている男は相当気持ち悪く映ったことでしょう。でもなりふり構っていられなかったんです。今、1秒早く走れば1秒長くWUGちゃんを見られる。電車のスピードは変わらない。でも今はお前が走ればその分早く着くんだ!走れ!走れ!!走れ!!!と自分に言い聞かせて足を動かしていました。

入場口に差し掛かったころにはちょうどフラスタの撤去作業が始まっていました。それを横目に受付のお姉さんにチケットをもぎってもらいます。この時点で息も上がり絶え絶えで、足にも疲労が出ていましたがコンマ1秒でも早くWUGちゃんの元へたどり着かねば、という気持ちだけで進んでいきます。

 

中に入るとスタッフさんがすぐに「何番ですか?」と声をかけてくれ、僕が声にならない声で「215番…!」と答えると「こっちです!」と先導してくれました。

僕の前を走るスタッフさん、フラスタの撤去作業をしながら頑張ってください!と声をかけてくれる方、僕が入る扉を開けて待っていてくれるスタッフさん。いろんな方に助けられながらここまで来て、「24時間マラソンのランナーはゴール前こんな気持ちなのかなぁ」…なんて感じながらついに扉の前まで走ってきました。

 

そこで、信じられないことが起きたんです。

 

扉を開けてもらいアリーナに入った途端、僕の目に飛び込んできたのはSSAを埋め尽くす観客と緑色のサイリウム。そして光の海の中に立つWake Up, Girls!の7人。

その瞬間、呼吸が整って心拍数が平常に戻ったんです。それまで声を出すのもやっと、荒く肩で呼吸するのが精一杯だったのにです。

幼い頃から大学卒業までずっとスポーツをやっていて、呼吸が元に戻るまでどれだけ時間がかかるのかは身体でも頭でも分かっていたつもりでした。正直今でもありえないと思っています。こんな経験は初めてでした。

 

頭で感じる美しさではなく、心を鷲掴みにされるようなすばらしい光景。それが体を一気に回復させたのかもしれません。登山して頂上に立った瞬間、急に景色が開けて目に映った絶景に思わず息を飲む…という感覚が近いでしょうか。すばらしい、美しい…そんな漠然とした、湧き上がる感情の波に襲われました。

そこにいるのはWUGちゃん7人と、WUGを見るためだけに集まった1万人。「ああ、ここまで走ってきて本当にSSAまでたどり着くことができたんだ…!!」という達成感に似た感情があふれる中、僕の「WUG最後の舞台」がはじまったのです。

 

 

腕時計に目をやったところ時刻は20時17分。雫の冠の2番に差し掛かったところでした。3月8日に仕事を休めなかったワグナー、1時間47分遅れでSSAに到着です。

 

 

…そこからのことはまた別の機会があれば書こうかと思います。ここまで駄文を読んで下さってありがとうございました。
人生第2章のどこかで皆さまとご縁がありますように。

 

SSA到着です

 

(1時間47分遅れで到着したワグナー&原文:ツカサ 〈第2章〉
(編集&アイキャッチ画像提供:赤雪すずみ

 

 

 

 

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