[ネタバレなしレビュー]『グノーシア』は名作であると叫びたい

Nintendo Switch

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「まるで美術品みたいなゲーム」。『グノーシア』のプレイを終えたあと、素直な気持ちを述べるとしたらその一言が出てくる。

 

2020年3月26日に配信された「Nintendo Direct mini」。あつまれ どうぶつの森、ポケモン剣盾、スマブラの新情報や新作タイトルが発表され世間を盛り上げたのだが、私が一番ぶったまげたのは『グノーシア』がNintendo Switchで配信されるという発表だった。まずはこの動画を見てほしい。

『グノーシア』は”SF人狼系シミュレーションアドベンチャー”と銘打たれている。1プレイ15分程度の人狼シミュレーションを繰り返しながら、SFの世界観で繰り広げられるストーリーがアドベンチャーゲーム形式で進行していく。なんだかとっ散らかっているように見えてすべてが恐ろしく整ったゲームなのだ。

 

ここで打ち明けておくと私は「人狼」が苦手だった。人間は自分たちの中に隠れた”人狼”を倒すため、誰が怪しいか議論して投票を行い退場させる。人狼は人間を食べて退場させる。そうして生き残った陣営の勝ちというルールの複数人で対戦するゲームだ。配役はランダムで決まるので情報の整理が重要になる。

 

以前知人に誘われてやってみたもののルールやセオリーがよく分からず混乱。とりあえず黙っていたら怪しまれ投票で即退場。そんな苦い思い出を持っていたのだが『グノーシア』は見過ごすことができなかった。

 

良質な小規模スタジオ開発ゲーム特有の丁寧な作りの雰囲気が漂っていた。ちょっと憂鬱で解像度の高さを感じるBGM、そして「ループ」というSF要素が魅力的に映った。何より「人狼」にもう一度挑んでみたいと思った。

 

オープニングより

 

Switch版の配信を期に『グノーシア』を始めた私は、すぐに何もかもほっぽりだしてドハマリした。ハマっているという自覚すらなく没頭していたのを覚えている。それだけの魅力、テンポの良さがあった。「人狼」への苦手意識が吹っ飛ぶほどの純粋なおもしろさがそこにあったのだ。

 

寝る間も惜しんで徹夜で終盤を走り抜けエンディングを迎えたあと、とても晴れやかな充実感がそこにあった。ついでに語彙もどこかに行ってしまったが。正直ここまでとは思ってなかった。間違いなく『グノーシア』は想像を超えた傑作だったのである。

 

というわけで、今回は『グノーシア』のレビューをしたい。このゲームの面白さやすごさを理解して楽しめる人は多いはずだ。私と同じように購入を足踏みしている人の背中を押せたらありがたき幸せである。このレビューが参考になることを祈る。

 

隠れすぎた名作になっていた過去

 

 

実は『グノーシア』はSwitchで初めて遊べるタイトルではなかった。2019年6月、PSVitaで『グノーシア』がダウンロード限定で配信されている。2019年はPSVitaが生産終了になった年だ。PSVitaの現行ハードとしての旬が終わりかけているタイミングで世に出た『グノーシア』はアンテナが高いPSVitaユーザーに凄まじく高い評価を受けることになった。

トキノドロップ(このサイト)で記事を書いてくれているPSVita伝道師の大木さん「グノーシアめちゃくちゃ面白い、Vitaでしか遊べないのはもったいなさすぎる」と評価していた。Vitaと一緒にこのまま埋もれさせるには惜しい、これはもっと多くの人に遊ばれるべきゲームだ、と。

 

これはいつかやらねば!…いつ?私は明らかに『グノーシア』のやり時を逃していた。そこに『グノーシア』が会社の垣根を飛び出してSwitchで配信になったのである。わざわざ『グノーシア』がこっちまで来てくれたのだった。

 

リプレイ性が高くテンポの良い人狼パート

 

『グノーシア』はプレイヤー+14人の登場人物で人狼ゲームを繰り返し行うことで物語が進んでいく。プレイ時間の3/4以上は人狼ゲームを行っていたはずだ。人狼に苦手意識がある私が苦痛を感じることなく全力で楽しめたのは、それだけ一人用人狼シミュレーションゲームとしてメチャクチャ面白かったからだ。

 

人狼の何が苦手かって制限時間があることだ。対人ゲームである以上議論や行動の決定に5分とかの制限時間をかけないとやってられないのはわかる。自分対14人のCPUという形式である『グノーシア』においてはそういった制限時間がない。

 

素早く効率的に情報をまとめるのが苦手な私にとって、自分のペースでゆっくり考えることができ、実際の人狼ゲームのように慌ただしくなりにくいというのは非常に遊びやすく感じた。CPUの彼らはこちらがボタンを押すまで話を進めるのを待ってくれるのだ。

 

自由に楽しみ方や勝ち方を考えられる

 

 

発言や投票結果といった情報を整理するのも丁寧にできるし、何を根拠とするかじっくりと考えることが許される。考えたくないときは直感に頼ったプレイもできる。

 

もちろん特定状況で強い動きのようなセオリーは存在するのだが、何を見て何を信じ、疑うのかはプレイヤーに委ねられている。

 

1プレイが5~15分程度で終わることも非常にテンポがいい。携帯機としてのプレイフィールも抜群だ。ゲームに慣れればボタン連打でサクサク進めることもできるだろう。判断を間違えて負けたとしても落ち込むことなく再チャレンジしやすいし、勝ったら勝ったで達成感がしっかりと味わえるのが心地良い。

 

そこそこ困難な条件で勝利できたリザルト画面

 

試合結果がわかる画面から初期条件設定画面までボタンを押す回数はたった2回と極めて少ない。決定ボタンを押せばすぐに次の周回が始まる。個人的見解として1プレイが短くまた遊びたくなるゲームはだいたい名作だ。『グノーシア』のリプレイ性の高さは魔性といっていい。

 

わかりやすくすぐに次のループに入れる

 

 

 

謎に満ちたループ系SF

 

『グノーシア』の世界観、ストーリーは一言で言うと”ループ系SF”だ。
PSVita版公式サイト、NintendoSwitch版公式サイトではこのように紹介されている。

グノーシアは嘘をつく。人間のふりをして近づき、だまし、そして身近な人間を一人ずつ、この宇宙から葬り去る――。

漂流する宇宙船内にて、人間を襲う未知の敵『グノーシア』に直面した乗員達は、誰が敵なのか分からない状況でこの危機を収束させるために、一つの解決策を試みる。 最も疑わしい人物から一人ずつコールドスリープさせ、船内に紛れ込んだ全てのグノーシアを活動停止させるのだ。

しかし、その人物が本当にグノーシアだったのか、あるいはスケープゴートにされた哀れな人間だったのか、知ることは難しい。最後に笑うのは人間なのか、それとも――?
http://d-mebius.com/gnosias/

グノーシアを全てコールドスリープさせても、グノーシアが宇宙船を制圧しても、問題が収束してしまえば、主人公は再び最初の日へと何らかの力によりループさせられることになります。
なぜループを繰り返すのか? どうすればループから抜け出せるのか?
『グノーシア』の舞台であるこの宇宙船には、主人公の他に14人の個性的な人物達が乗り込んでいます。繰り返す世界の中でのちょっとした偶然から、彼らの抱える物語を窺い知ることができるイベントが起こることがあります。協力あるいは敵対しながら、彼ら登場人物達のことを深く知っていくことが、このループの謎を解く鍵となることでしょう。
https://globule.info/gnosia/

舞台は漂流する宇宙船であり、地球を含めた様々な出自の出身者が乗り込んでいる。そこに人間を襲う未知の存在”グノーシア”が人間のフリをして紛れ込んでいることが判明。一人ずつ疑わしい人をコールドスリープさせて解決しなければならない…という話し合いが始まった場面に主人公はゲーム開始早々、放り込まれてしまう。

 

そして“グノーシア”のコールドスリープに成功しても、”グノーシア”が宇宙船を制圧しても話し合いが始まった瞬間へ謎の力によってループしてしまう。しかもその度に役職や船員が違うのだ。

 

セツは主人公を導く存在だが謎も多い

 

ゲーム開始時にこの状況をある程度”セツ”が説明してくれるが、あまりにも謎が多すぎるため、最初は混乱することばかりだ。ループを繰り返していくうちになんとなく状況や船員の人物像もつかめてくるだろう。

 

ループごとに少しずつ違う条件下で発生するイベントを通じて登場人物たちの情報”特記事項”を集めていく。それが謎を解明する鍵になると信じてセツと主人公はグノーシアと対峙することになる。

 

ループごとに状況が違うということは主人公が時にグノーシアとして船員を襲う場合もあるということだ。そういう時のプレイヤー側の罪悪感や、責任感といったマイナスの感覚がものすごく軽くなっているのもポイント。

 

どちらの陣営も一生懸命だが険悪になりすぎないのは、いわゆる人狼だと投票で処刑するところが『グノーシア』だと”コールドスリープ”という一時的な処置に置き換わっていたり、仲間となった船員とのやり取りが暗くないところがうまく機能している。

 

コールドスリープなのでそのうち戻せる

 

ひたすらループしていくなかで登場人物の出自やこの世界の情報を知っていくことになるのだが、グノーシア世界において普通であっても2020年の我々の地球においては衝撃的なものであることがかなり多い。そのため理解が追いつかない!となってもすべてを理解しなくても何となく進んでいけるつくりにはなっているので安心を。

 

分かったら分かったで楽しいけれど、分からなくてもとにかくヨシ!という間口の広さがあるのだ。

 

何度もループを繰り返してたどり着く物語の結末は極めて美しい。美術品みたいなゲームだ…と思わずためいきが漏れるようなものであり、そこまで情熱を傾けてプレイしたことを裏切らないものになっている。なんとも言えないこの感情を体感してほしい。

 

こだわりを感じるグラフィック、演出、BGM

グラフィックは統一感があって世界観を演出することにつながっている。背景やユーザーインターフェースのデザインは演出と合わせてゲーム画面で見ると印象が変わってくるはずだ。

 

イベントの文章に集中していると気が付きにくいが、ゲーム中、船員の状況、生存者をいつでも確認できる。イベント中彼らの状況に変化があると実はその確認画面も反映されていたりと細かい演出が光っている。

 

役職ごとの報告もいつでも見れる

 

エフェクト周りもテンポが良いので議論中のコマンド演出も印象に残りながらも快適なプレイを妨げることがない。

 

アクションゲームでもないのにゲーム画面の動作は60fps(1秒に60回)であるのにはかなりのこだわりを感じた。これは格闘ゲームレベルの数字だ。実際、演出や画面の動きがぬるぬる動くのは感触としてとても小気味良いし、レスポンスも快適である。そのあたりは動画ではなく実際に触ってみると魅力が伝わるだろう。

 

BGMは宇宙っぽさ、浮遊感がとても気持ちいい。あまり詳しくないのだが歌が入るものはボコーダーが使われているようで神聖さがある。聞き入ってしまうBGMは良いBGM。したがってグノーシアのBGMは聞き入ってしまうので良いBGMである。グノーシア三段論法だ(?)。

 

こちらの紹介映像に使われている夜パートのBGMがダントツで好き。

 

登場人物に生々しさすら感じるプレイ体験

 

プレイヤーの“直感”の数値が高いと”演技力”の低い船員のついた”嘘”に気がつく演出が発生する。”人間”は嘘をつくことができないシステムなので、誰かの嘘に気が付いた瞬間、その人が人間の敵であるということが確定する。

 

しかし嘘に気付いて敵が誰なのかわかっても油断は禁物。突然この人が怪しい!と言い出せばあなたが嘘に気付いたことが”グノーシア”に伝われば狙われてしまう。投票するよう仕向けられたり”グノーシア”に襲撃されるハメになる。

 

14人の船員たちにはそれぞれステータス傾向が設定されており、嘘に気付きやすいキャラクターも存在する。あっさりやられてしまったあの人が突然疑い出した相手が実はグノーシアだった……!なんてことも。

 

こんなこと言ってるククルシカがグノーシアだった回

 

嘘に気付きやすくなる”直感”、嘘がばれにくくなる”演技力”、狙われにくくなる”ステルス”、理詰めしやすくなる”ロジック”など6種のステータスがあるが、人狼パートをプレイすれば勝っても負けても経験値が溜まりステータスを強化できる成長要素があるおかげで、いずれ勝ちやすくなるのもコンピューターゲームらしいところ。

 

夜パートでは自室でステータスアップが可能

 

議論や発言以外の部分で情報を得られるのは実際の「人狼」と明確に異なるが、誰が敵かを知っていても他の参加者を巻き込まなければ勝つことが出来ないのは同じだ。『グノーシア』では14人の船員を疑い、ときにかばいながらうまく誘導して戦うことが重要なのだ。

 

冗談みたいな見た目からして嘘くさいしげみち

 

何回かプレイしていくうち、登場人物に「コイツそういうとこあんだよな」みたいな印象が自分の中に出来ていくのはとても興味深い体験だった。

 

誰にでも友好的で誰かが疑われるのを好まない”しげみち”はすぐに弁護に入ってくれるが、嘘が下手なので手は組みたくない……。そんな彼はコメディリリーフ的ポジションであり、イベントで描かれる人物像とステータスの傾向が近くなっているのもポイント。

嘘は下手だがカリスマが高く勇敢なのだ

 

そんな彼らと誰と協力関係を結ぶのか。この人を信頼するのか、どうやって裏切るのか。自分が生き残りつつ敵をどうやって追い詰めていくのか。詰め将棋のように試合展開を考えながらプレイすることになる。そのロジカルな感触にだんだん人に対する情のようなものが芽生えてくるのがとても楽しい。

 

議論やイベントを重ねるごとにゲーム中のデジタルな存在である”しげみち”を通じて製作者の中にある”しげみち”という人格が見えてくる感覚があったのには驚いた。もちろん”しげみち”以外にも魅力的なキャラクターが13人いる。

 

ジナは人気が高い(私調べ)

 

こういったゲームにしかできない表現が『グノーシア』にはたくさんあり、すごくゲームらしいゲームだと感じられた。

 

グノーシアはインディーゲームの金字塔!

 

『グノーシア』の魅力についてここまで書いてきたがまだまだ伝えきれていない自覚がある。手に取って遊んだ印象と聞いたり見たりした印象が明らかに変わる、自分で遊ばないと面白さが伝わりにくいタイプのゲームと考えているからだ。

 

ゲーム制作サークル「プチデポット」による制作。なんと4人で開発が行われているという。それを知った時、「なるほどなー」と思ったのが正直なところだ。少人数開発によってゲームとしての秩序が守られていたと感じたのだ。

 

プレイ体験の細かいところまでこだわりが行き届いており、『グノーシア』の世界観を心置きなく満喫することができた。プレイ中にスン・・・と現実に引き戻される感じがまったくないのだ。そういう『グノーシア』との信頼感が出来上がっていたからこそ、議論への没入や登場人物への感情移入がしやすかった。

 

『グノーシア』は間違いなくインディーゲームにしかできないことをやりきった、インディーゲームの金字塔としてゲームの歴史に名を残すゲームだ。

 

「人狼」が苦手な人でも「レベルを上げて物理で殴る」が実は出来る。経験値を効率よく稼げば難易度は一気に緩和される。ゆっくりやっていけばいつかクリアは出来るはず。「ポケモン」がクリアできるくらいの人なら問題ないだろう。「人狼」が得意な人ならゲームを普段しない人でも楽しめるはず。

 

もし『グノーシア』のプレイを検討しているなら、くれぐれもネタバレを踏まないように最大限の警戒をしながらプレイすることをおすすめする。Twitterのハッシュタグや検索、掲示板サイト、攻略サイトはネタバレが溢れているので気をつけて。

 

――それでは、良い旅を!

 

 

 

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グノーシアSwitch版 ニンテンドーストアページ

※Vita版とあとに出たSwitch版の違いはバランスの調整、片手持ちの追加、バックログ、クリア後のイベントギャラリーの追加。

 

 

 

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