ゲームをプレイするのって楽しいですよね。しかし、プレイして楽しいだけがゲームではないと思います。楽しいのは前提として、その過程に様々なことを学ぶきっかけがあるはず。今回はゲームに関係する書籍4冊からゲームに関する様々な気づきがあった本を紹介します。
『世界一のプロゲーマーがやっている 努力2.0』ときど ダイヤモンド社
ストリートファイターなどの格闘ゲームのプロゲーマー、「ときど」選手の本です。
「努力=精神論」、「努力=辛い」、「努力=苦しい」、「努力=我慢」。
努力することをこのように考えてしまう人たちに、努力することはそういうことではないと説きながら学業や仕事でも使える普遍的な努力の仕方について書かれています。
ゲームで勝つ方法が、学業や仕事で役に立つ、といわれてもピンとこない人がほとんどだと思います。しかし、読んでいてなるほどと思うことが多くありました。
例えば、格闘ゲームに限らず現在のゲームの多くは制作会社によるアップデートが行われ、環境が大きく変わります。ゲームによっては数週間の一度という頻度でアップデートが行われることもあります。そのアップデートの結果、自分が使っていた技が通用しなくなれば、得意な戦い方そのものが全く使えなくなることもある。
そこで現在の環境で戦うための手法の模索が始まります。
これは現代でも同じようなことが言えると思います。特にわかりやすいのが、2020年の新型コロナウイルスによる社会への影響ではないでしょうか。
仕事に関していえば、急遽テレワークや在宅勤務が導入され、今までのように実際に対面でやっていたことができなくなってしまい、Web会議を取り入れることになった。学業の面でいえば、今も色々と不透明ではありますが、入試の時期が変わることも考えられる。将来的に9月入学に変わることも可能性としては挙げられる。
極端な例を出しましたが、アップデートされていくゲームのように社会も日々変化しています。ときどがこの本で語っている努力、つまりこの時代の中で生きるために行う自分自身へのアップデートがどうしても必要になっていくと私は思います。
今のままでいいのかな、そんな漠然とした不安を持っている人はこの本を読むことで、一歩踏み出すきっかけになるかもしれませんね。
『レトロゲームファクトリー』柳井 政和 新潮文庫
ゲーム会社を立ち上げ、ゲームの開発や企画を実際に行っている方が書く小説です。
レトロゲームをスマートフォンアプリなどに移植する会社の社長とプログラマーが中心となり、権利問題や海賊版問題などのトラブルを解決しながら仕事を完了させようとするお仕事小説です。
タイトルやあらすじからもわかるように、レトロゲームについて多く触れられています。クリエイターなどの「何かを創る人」へ向けたメッセージが作中多くありますが、その中で特にメッセージ性が強く象徴的だったシーンを一つご紹介します。
主人公たちのレトロゲーム移植会社は取り扱う仕事上、どうしても金銭的な余裕がありません。社長とプログラマーはレトロゲームへの愛があるからこそ、レトロゲームにこだわってゲームの仕事をしています。お金にはつながらなくても自分が創りたいものを創っているのです。一方で、大手ゲーム会社の地位がある人間は自身が創りたいゲームなどなく、開発コストを抑え、売れるゲームを創ることで出世することを目指していく、というもの。
どちらが良いのか白黒をつけられる問題ではありません。会社に勤める人間であれば、会社に利益を出せる事を求められ入社しているのですから、拝金主義であることは社会人として正しいでしょう。
ゲーム好きであれば、懐かしいタイトルが出てきたりして楽しいですし、何かを創る人であれば色々と考えさせられるかもしれません。私もブログに文章を掲載する、という形で石を湖に投げ込んでいますが、石が作った波紋が世の中を少し前向きにしてくれていると思えるように感じたものを表現していきたいです。
『ゲームは人生の役に立つ』小幡 和輝 エッセンシャル出版社
十年を超える不登校を乗り越え、高校3年生のときに会社を起業、その後内閣府の認定を受け地域活性化の専門家として活躍している著者の本です。
ゲームから様々なことを学んだ自身の経験をもとに、「ゲームは役に立つのではないか」という視点で教育関係者、脳科学者などなど様々な人と対談をしています。
特に「世間ではチェスや囲碁、将棋はいいものとされているのに、なぜテレビゲームはだめなものとして扱われるのか」ということと、ゲームは「コミュニケーションツール」であり、ルールから攻略法を学ぶ「学習ツール」であると主張しています。
著者以外にも様々な分野で活躍する人との対談なので、普段ゲームに関わらない人からの客観的な考えも書かれています。
私自身のゲームに対する考え方をふまえながら、こちらの本について以下の記事で更に詳しく紹介しています。
『勝ち続ける意志力』梅原 大吾 小学館新書
日本人初のプロゲーマー、梅原選手の本です。
梅原選手の試合の中でも特に有名なのは、「背水の逆転劇」「37秒の奇跡」と呼ばれるこの動画ではないでしょうか。
梅原選手の操るケンが必殺技を一つでもガードしたら負けてしまう状況から「ブロッキング」という特殊なガードで敵の攻撃をすべてさばき、そこからの大逆転勝利を収めます。この「ブロッキング」は通常のガードで発生してしまう僅かなダメージがゼロになり、敵の攻撃を無効化できるもののタイミングを一瞬間違えればブロッキングが成立しないというリスキーなシステムです。しかし追い詰められていながらも梅原選手は正確にレバー入力で攻撃を受け流しています。
この本は梅原選手がどのような考えでゲームと向き合うのか、そうなったきっかけは何なのかが書かれています。つまり、梅原選手の人生が書かれている一冊です。そして、なぜ梅原選手が強いのかがよくわかる一冊です。
梅原選手は姉により、「才能」の違いを見せつけられ、打ちひしがれます。そして、才能でかなわないからこそ、「努力」で上回ろうとします。家族という小さなコミュニティで突き付けられた「違い」は梅原選手の人生を大きく変えたのではないかと思います。
そして、「才能がないから仕方ない」ではなく、「才能がないから努力で勝負する」という姿勢が恐ろしい。自身の逃げ道を自身でつぶして前に進む姿勢が梅原選手の格好良さなのだと思います。
また、教育関係の仕事を6年ほどしていた人間として、教育の在り方を改めて考えさせられました。なぜ、小さな子どもがもつ「プロ野球選手になりたい」はいい将来の夢で、「プロゲーマーになりたい」は悪い将来の夢になるのでしょうか。ここに入る悪い将来の夢は時代によって変わると思います。令和の時代であれば、「公務員になりたい」はいい将来の夢で、「有名なYouTuberになりたい」はきっと悪い将来の夢になるのでしょう。
子どもが小さいときほど、「将来の夢は?」という質問を大人や教師から投げかけられる。大人にとって常識的なものを答えたなら喜ばれ、予想もしていないものであれば苦笑いをされる。どのような答えでも具体的にその夢に向かう方法を教えてくれる人はいない。
それなのに、なぜ大人はそういった「将来の夢」の話を子どもに振るのでしょうかね……。
話がそれました。本ももちろん面白いのですが、梅原選手が主催する、「獣道」という企画も非常に面白いです。この記事の上で出てきたときど選手との対戦動画は必見です!プロゲーマーの生き様がそこにありますよ。トキノドロップ管理人の赤雪さんはこの動画を見て思わず涙が出たとのこと。私もじんとくるものがありました。
ゲームをする時間が無駄な時間になるかは向き合い方で変わる!
ここまでゲームに関する書籍を4冊紹介してきました。
時代によって戦い方を変えていくことの重要性。
お金に左右されない価値。
コミュニケーションと学習の方法を学ぶきっかけはあふれていること。
才能、努力、ゲームとの向き合い方。
これらはゲームと触れ合ってきた人の本で語られた内容で私が受け取った一部にすぎません。読む方の感性や体験でもっと多くのメッセージを受け取ることもできるはずです。
ここからは持論なのですが、ゲームをする時間は向き合い方次第で有意義なものにきっとできると思います。
これはゲームに限らない話ですが、無駄なものを無駄な時間として、持てるもの一切をそれに費やさないという生き方は時間や効率に追われる毎日が待っているでしょう。一見無駄に見えるものが日常にメリハリをもたらし人生を豊かにすることもあるはずです。楽しく、熱を上げて遊べるものであれば決して無駄なものであるとは限らないと思います。
想像もできない様々な出会いが人生にはあり、その経験や体験が自身の成長や楽しいものにつながることがたくさんあります。ゲームがその一つになる……のかもしれませんよ。
もしゲームをしている時間が無駄なんじゃないか?という気持ちになってしまったらゲームのコントローラーを一旦テーブルに置いて、こういった本を読んでみるのも悪くない提案なのではないでしょうか。読者さんのゲームとの向き合い方がハッピーな関係になりますように!
なんだか最近疲れているな…という方にはこちらの記事をおすすめします。
上手な休み方について書いた過去の記事です。新入社員でなくても役に立つ内容かと思います。