明日がおもしろくなる!クセが強いお笑い芸人の本おすすめ4冊

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お笑い芸人の中でも、癖が強い、ひねくれているといわれている芸人さんの本を紹介します。
それぞれの芸人さんが様々な信念や考えをもっているため、読んでいて面白いだけではなく、様々な気づきがありました。

『僕の人生には事件が起きない』岩井 勇気 新潮社

コンビ格差が大きいといわれるハライチの澤部じゃないほう、岩井勇気さんのエッセイ。

いわゆる、「コンビのじゃないほう」と呼ばれる岩井さん。
バラエティー番組、ゴッドタンでは腐り芸人としてポジションを確立し、バラエティーやテレビに対する毒が全開のマジ歌を披露し、毒を吐くキャラを見せつつも、冠ラジオ番組 ハライチのターン! では猫ちゃんニュース という不思議なコーナーが人気。最近では、塩の魔人、醤油の魔人 というコントもTwitterなどで流行りました。そして、なぜか乙女ゲームなどの女性向けコンテンツのイベントやコミケにも姿を現す不思議なお笑い芸人です。

この本ではそんなちょっと変わった岩井さんの日常について綴っています。

タイトルにあるように、この本には大きな事件は出てきません。お笑い芸人の仕事に関するエピソードはほとんどなく、誰しもが経験しようと思えば経験できるような日常を岩井さんの視線や独特な感性をもって語られています。

人によっては「くだらない」という一言で感慨もなく片付けられてしまう、毎日繰り返しのように感じる日常を楽しんでいる岩井さん。日常に変化を求めたり、何か起きないかな、と期待している人は多いと思います。

しかし、この本を読んで思うのです。退屈に感じる日常も自分の心持ち次第では非日常になり、楽しむことができる。大きな事件やイベントがあっても、自ら楽しもうと思わなければ、楽しめない。日々を退屈にしているのは自分自身なのではないか。

日々が退屈だなと思う人にこそ読んでほしい一冊です。

『すべてのJ-POPはパクリである』 マキタスポーツ 扶桑社文庫

音楽ネタやゴッドタンの「マジ歌選手権」のダークネス様でも有名なマキタスポーツさん。

本書では、J-POPのヒット曲には「カノン進行」が多い、「サクラ」「ツバサ」「トビラ」という歌詞が多い、といった分析が書かれています。

音楽が好きな人であれば、これ以外にも「あるある」とうなずきたくなる内容が多く書かれています。
また、第1章に書かれていることを意識すれば、ヒット曲っぽい音楽を創れるとも思います。

しかし、本書においてマキタスポーツさんが訴えたいことは「あるあるネタ」や「音楽を創る技法」ではないと感じました。

前著の『一億総ツッコミ時代』でマキタスポーツさんが分析するように、現代は他の人の発信に対して「ツッコミ」だけの人が多く、自ら情報や表現、ネタなどを発信する「ボケ」が少なくなっているのかもしれません。

しかも、そのツッコミはボケとともに笑いをつくる、という性質ではなく、「批判的」「人格攻撃的」なツッコミが増えているとしています。
これについては、Twitterでの炎上などを想像していただければと思います。

このような過剰な「ツッコミ」が多いからこそ、自己防衛的な振る舞いが増え、自ら情報やネタや表現を発信する「ボケ」が減り、なんとなく日本社会がギスギスして、重苦しいのでは、と書いています。
しかし、そんなギスギスした社会でありながらも、インターネットやSNSの普及により、なんらかの形で表現することが求められる。

そんな現代で自ら表現し、発信していくための方法を伝えたい、というのが本書の目的なのだと思います。

タイトルにもある「パクリ」という言葉を見ると、多くの人は否定的な意見を持つでしょう。

文章を書いて、ネット上に公表している私も「パクリ」に対していい感情を持ちません。事実、他人の表現を「丸パクリ」して、賞賛を得ている人は「ツッコミ」の人たちの格好の餌食になっています。私も引用もせずに自分のものかのようにパクる人は1ミリも擁護できません。

しかし、マキタスポーツさんは本書でパクリを全否定するのも違うのではないか、と投げかけています。
なぜなら、初めから真似などをせずに、いきなり自分の表現ができる人などほとんどいないからです。

音楽であれば、好きな曲をコピーしていくなかで、オリジナルソングを作っていくでしょう。
絵についても模写して、技法などを身に着けることもあるでしょう。

 

自分の表現のために、初めは「パクる」。そして、パクった要素と表現者である自分のエッセンスを混ぜていく中で、自分の表現を身に着けていく。

表現者としての第一歩としての「パクる」方法を本書で伝えたいのだと私は思うのです。何かを表現したい人には読んでほしい一冊です。

『天才はあきらめた』 山里 亮太 朝日文庫

蒼井優さんと結婚したことでも最近話題になった南海キャンディーズ 山里さん。

本書のタイトルは「天才はあきらめた」。12年前に書いた「天才になりたい」を改題し、大幅に加筆した作品です。山里さんがなぜ芸人になったのか、芸人として売れるまでにどのような苦難と向き合ったのか、相方、しずちゃんとなぜ衝突したのかなどが書かれた一冊です。

本書の前書き部分にも書かれていますが、読んでいると山ちゃんって本当に人格疑われるようなことしているんだな…… と引く部分もあると思います。実際、私はしずちゃんに対しての言動に対して引きました。反省はしているし、山ちゃんの心情も書かれているので納得はできるのですが、それでも許されることとそうで無いことはあります。全体的にしずちゃんの好感度が上がる一冊です。言い換えると、ヒールである山ちゃんの葛藤や苦しみ、そういったなかでもがきながらも前に進む男の歩みが書かれていると言っても良いかのかもしれません。

なぜ天才をあきらめたのか。それは山里さんが天才を次のように定義しているからです。

「自分は何者かになる。そんな、ぼんやりだけど甘い夢のような特別な何かを容易に見つけられて、何者かにたどりつくため必要な労力を呼吸するようにできる人、それが天才なんだと思う」(P.16)

しかし、山里さんは努力へのブレーキを強めてしまったり、サボる言い訳を探してしまったりする。
だから天才はあきらめた。天才になるのではなく、自分が味わった苦しい感情を全部使って、自分を「頑張れなくさせるもの」から全力で逃げ切れ、と勧めています。

現代ではインターネットやSNSにより、自分よりも上をすぐに突きつけられます。そして、プライドや今までの努力をへし折られることがあります。あの人と比べて俺はヘタだ、才能が無いんだ。そんな自己嫌悪に陥ってしまうこともあると思います。
そんな何者かになりたいと思う人が潰されやすい時代だからこそ、この本から学べることはあると思います。

しかし、山里さんがしずちゃんや過去の相方にしてきたような、自身のストイックさを元にした他者への努力の強要などは絶対にマネしないでくださいね!

『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』 若林 正恭 角川文庫

お笑い芸人 オードリー 若林さんのエッセイです。
物事を考えすぎてしまったり、自意識が強すぎて失敗を恐れすぎたり、周りの目を気にしすぎる人に読んでほしい一冊です。

人の言葉や常識的な考え方に対して、しっかりと考えて、そして考えすぎてしまうからこそ若林さんは悩むのだと思います。

この本は読む人によって、響く部分は大きく変わってくると思います。
社会で生きていくことだけではなく、芸能界についても語られていますし、若林さんなりの恋愛についても語られています。

私が個人的にもっと早く出会いたかったなあと思った言葉をふたつ紹介します。

「ネガティブを潰すのはポジティブではない。没頭だ」(P.142)

「人嫌いと人見知りは違う。本当は人に近付きたい、でも近付いて嫌われたくないという自意識過剰な人が人見知りになる。人見知りの人は周りに人が少ないから孤独感を勝手に抱き始める。そうなると誰かに理解して承認してもらいたくなる。承認欲求が芽生えると表現なんぞを始める」(P.238-239)

 

私にもネガティブな自分を責め、もっとポジティブに考えなければ! と思ってしまっていた時期がありました。

ただ、そう思ってもうまくいかないんですよね。理由は簡単でネガティブな感情の方が強いから。ポジティブに考えようとすればするほど、「そんなに都合良くいくはずない」と思ってしまう。

とりあえず考えないようにするために、私はゲームをやるようになりました。

社会人になってから少しだけ離れていたのですが、やり始めたらとまらなくなって今でも毎日ゲームに触れています。それだけでは飽き足らず、趣味でゲーム関係の記事を書くようになりました。

楽しいこと、表現することに集中するとネガティブな感情が入り込む余地がだいぶ減る。
ネガティブモンスターに振り回されなくなると、気持ちがすり減らなくなる。

そうすると仕事との付き合い方も変わってきて、今もなんだかんだ社会人をやれています。

この紹介した言葉以外にも響く言葉は数多くあると思います。
その中に、読者さんの心を軽くしてくれる言葉があるかもしれませんね。

また、若林さんの旅行エッセイ『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』は『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』を読んでから手に取ることをオススメします。

若林さんの成長を時系列で追いかける、という意味もありますが、『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』の中で若林さんがある言葉をかけたあと『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』をゴミ箱に捨てるシーンがあり、自分が抱えていたネガティブな感情が生まれた理由を若林さんなりに見つけます。

若林さんが見つけた答えは日本などが採用しているシステムなのですが、それとは逆のシステムを採用している国に行こうと思い、キューバに単身で旅立ちます。

キューバ編を最後まで読み、本作は旅行エッセイではなくて旅行文学なのだと私は思いました。

また、2020年10月に出版された文庫版は「モンゴル」「アイスランド」の旅行記、さらに「コロナ後の東京」という時事的な内容についても書き下ろしがあります。単行本などで読まれた方ももう一度手に取っていただきたいです。

 

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