ゲーマー視点で転売がなぜ嫌われるのか整理してみた

ライフスタイル

当サイトではAmazon,楽天のアフィリエイトプログラムを利用して商品を紹介しています。

 

先に書いておきたい。わたしは転売屋、と言われる人たちがだーーーい嫌いだ。
わたしがなぜ彼らが嫌いなのかがうまく説明できないと感じていたのだけど、そろそろ自分なりに答えが見えてきたのでなるべく分かりやすく書いていく。ゲーマーなのでカタンというボードゲームと現実を比較して整理していきたい。

(と言ってもカタンはそんなにやりこんでいない)

 

ちゃんと転売の話につながるのでもう少しお付き合いいただきたい。

あなたは「カタン」というボードゲームをご存知だろうか。

各プレイヤーは土地の近くに開拓地を与えられ、土地から産出される羊、木、麦、土、鉄といった資源を他のプレイヤーと売買することを通じて自らの利益を拡大していく。

開拓地を発展させたり、街道を作って新しく開拓地を作ったりカード引いたりする。それぞれ条件を満たすと得点を得られる。これを最初に10点集めた方が勝ち、という内容になっている。

このゲームの面白いところはゲーム開始時にランダムに土地の並びが決定されること。つまり、「○○はいっぱい持ってるけど☓☓が手に入らない!」という状況はほぼ確実にやってくる。それを減らすのはテクニック。

そして、プレイヤー同士で交渉をして資源カードを交換することがほぼいつでもできる!ということ。資源の偏りが起きていると、羊ふたつと鉄ひとつの取引が成立することもある。需要が常に生まれるのだ。

ゲームを有利にする上で「土」と「鉄」はどうしても必要になりがちで、これも需要が高い。

カタン | ボードゲーム・テーブルゲーム | ホビー | おもちゃホビー | 通販ショップの駿河屋
カタンについての説明はこんなところで本題に入りたい。

 

カタンで起きうるシチュエーションを例に出して、「転売」について考えるきっかけとしてみよう。

 

例A)Xさんはプレイヤーの中で唯一「土」を大量に持っている。持っていない他のプレイヤーが欲しがっているので、羊4つと土1つなら交換するよ、と条件を提示した。

例B)YさんにXさんが鉄の交換を要求してきたが、さきほどXさんに不平等なレートの取引を要求されたので報復として断った。

例c)Zさんは初めてカタンを遊ぶ。ひたすらふっかけられまくったのでまともに取引できず最下位だった。

 

例A、独占と価格決定権、イレギュラーな入手方法の問題

例A)Xさんはプレイヤーの中で唯一「土」を大量に持っている。持っていない他のプレイヤーが欲しがっているので、羊4つと土1つなら交換するよ、と条件を提示した。

カタンではお互いがWinWinの形になる取引だけをしていくよりも、柔軟な取引を行ったほうが有利になることが多い。柔軟な取引とはどちらかに不平等な取引でもある事が多い。

 

資源を本来の価値より安く売ってでも、必要な資源を手に入れるような取引が可能だ。もちろんその逆も。交渉によって取引条件を少しはフェアな形に近づけることもできるだろう。

しかし絶対に欲しい、けれども相手との取引を通じてしか絶対に手に入れることができない…つまり相手に独占されている資源を手に入れたい場合は話が変わる。

あなたは渋い顔をしながら相手の言い値を支払うしかないのだ。それができなければ取引の場なら降りるしかない。(状況によっては別ルートでの仕入れが出来る。カタンなら。)

 

市場で取引対象の独占に成功するというのは価格決定権を手に入れるのと同じである。

もし他のプレイヤーが「それ、もっと安くうちなら取引できるよ」と申し出ることができれば独占は崩れ、競争が起き、そのものが持つ本来の価格に近づいて行くだろうけど、そうでない限り、独占を行っているものが価格を好きなだけ釣り上げる事ができる。

とはいえ売れなければ本人の使う用事もない場合、在庫として抱え込むことになる。需要に合わせて値段を下げることになる。

一度値段がついてしまえばしばらくはその付近の値段からなかなか動くことはない。もしも独占者以外の誰かが取引対象を手に入れたなら、需要に合わせた値段を提示することが多い。具体的にはさっき付けられた値段。
そうして価格は吊り上がっていく。買う人がいるからだ。

 

現実の話にすると、チケットを売り切る、チケットを使うイベントに行けなくなった…といった目的を達成するため、本来の価格より安く売るというシチュエーションは起こりうる。

これは資本主義が、とか関係なく必要な事と言えるだろう。だが独占されたものを買うというのは売り手(独占している者)に価格決定権がある。しかし買い手には買う自由も買わない自由もある。
売り手としては売れないと困るものの、買い手がつくなら値段を無限に釣り上げたいという心理がある。業者、企業による独占状態というのは資本主義において健全で公正な競争状態を維持するため法律で防がれることもある。

特に問題になるのは、転売屋とされる人々がターゲットとするのは数に限りがあるなど確実に需要が見込めるものばかりである点、さらにそれを転売を目的としなれば実現し得ない方法で独占を行い価格を吊り上げる点、そして資本主義である以上問題はないと彼らが胸を張っている点…。

他にもあるだろうが、価格決定権を持つほどの独占による価格吊り上げ、これに対して彼らの多くは「本当に手に入れたいなら払うべき値段」「妥当な値段をつけている」「安い値段をつけるほうが悪い」と言う。

 

需要があることを差し置いても、本来設定されている価格はその商品、チケットの興行主の意図があってこその価格であるはず。おもちゃであればターゲット層の持っている財力に合わせて決定されているだろうし、チケットの興行主…アーティストであれば、チケットの値上げも確実に検討しているだろう。

クルーガー教授は同エッセイにおいて、米国のプロアメリカンフットボールの「スーパーボウル」のチケットが転売サイトにおいて高額で取引されている事例をとりあげ、
主催者であるNFL(National Football League)が当初からより高額なチケットを販売すればよいのではないか、という疑問を呈している。
そして、この疑問に対して、NFLの広報担当副会長は「ファンとの持続的な関係(on going relationship)を維持するため、フェアでリーズナブルな価格に設定しようとしている」(Krueger2001:25)ためであり、
「長期戦略的視点(a long term strategic view)」(ibid.)が背景にあると回答している。

「チケット転売問題」の真の問題(上)~転売価格は不当なのか?~
「チケット転売」がこれほどの社会問題になるという事実は、チケットの転売に対して膨大な社会的ニーズが存在するということである。

 

 

値上げによって起きるのはお金のない層、特に若い層のファンをシャットアウトする事であり、その層の一部が未来のファンになりうる層である事は疑いようもない。

1億円を落とす客一人より、10000円のチケットを買う1万人のファンがいる状態のほうが安定的であり、売上の伸びしろも大きい。新しいファンを連れてくるファンもいるだろうけど、1億円を落とす一人の客がそんなに何人も増えるだろうか?値上げによって首が絞まるのはアーティスト自身だろう。

 

イベントに来てもらうことは次の活動につながるものである。そのために目先の利益ではなく、長期的な戦略……この場合ファン層の拡大を優先して価格を下げる傾向にある。それが可能になるのはチケットの金額以上の価値がファンにはあると考えてもらえるからだ。

一枚のチケットには価格以上の期待やアーティストの将来が載せられているといってもいい。その分の価格が下げられている…そう考えた時、それを金銭に変換し搾取してしまうことにもなる。

色んな人、知り合いを誘ってイベントに来てほしい。また来てほしい。転売行為がそういった想いによって設定されているチケットの価格を歪め、アーティストの想いを踏みにじることになってしまっている。

 

そして抽選や先行販売で、本来チケットが手に入るはずだった権利が彼らのイレギュラーな手段によって侵害されているのも事実だろう。ツール、bot、人海戦術、大量のアカウント。それらの手段に対し、通常の手段での購入は太刀打ちするのが非常に難しい。

需要があるからと近づいて来た輩は頼んでもいないのにチケットを勝手に確保、独占して価格を吊り上げてしまう。誰かが頼んでやっているならまだしも、彼らが自己の利益のために行っていることである。彼らがいなければ価格は釣り上げられることなく販売者と消費者間の取引はそのまま成立するのである。

「本当に手に入れたいなら払うべき値段」「資本主義だから」という彼らの言葉も、責任を販売者や社会に転嫁するものにほかならない。それでも、というのであれば販売業者として振る舞うべきであり、独占によって起きる問題に対して責任を持つべきだと思う。

チケットの価格を上げた結果、客離れが起きたとしてその責任を被るのはアーティストだ。責任を持つべきといくら言った所で責任を取る事ができない転売屋の人々は、安全圏から自分の利益を追求しているという事実がある。

例B、匿名性の問題

例B)YさんにXさんが鉄の交換を要求してきたが、さきほどXさんに不平等なレートの取引を要求されたので報復として断った。

ふっかけられた事を根に持っていたあなたは後でふっかけてきた相手から取引を申し出て来ても感情を理由に取引を断ることもできる。
「さっきふっかけてきたじゃん!」「お前儲かってんじゃん!」と言って断ってしまえばいい。
転売をしている人が分かっているなら吊るし上げるなり出禁にすればいい、のだがそれは難しい。

 

現実で転売がなくならない、流行しているのはここに問題にあるだろう。匿名性の問題である。

異常な形の転売を常に行っているということを知ったなら、需要があるからと高いお金を払って言い値で買うという人でないならその相手との取引をためらうはずだ。だがそうはならない。メルカリにしろヤフオクにしろ、チケット取引サイトとそれらのマーケットではアカウントを別のものにしてしまえば取引を始めるまでは相手が何者であるかもわからない。

プライバシーを守るためではあるが匿名配送もその匿名性を高めることにつながってしまっている。

つまりろくでもない組織の関係者だろうと犯罪者であろうと、未成年であろうと、誰でも転売行為によって利益を出すということが可能なのである。その上テレビなどのメディアでカジュアルなものとして報道された結果、小遣い稼ぎとして誰もが行える環境となってしまった。

「誰が行っているか」が非常に分かりづらい結果、誰かどこで行っているのかもわからない。

こういった行為が匿名で行われるからこそモラルの崩壊が起きていると私は考えている。もし実名などの個人情報を表示して転売している人がいれば攻撃の対象になるのは間違いがなく、それを見て同じことをしたいと思う人はいないだろう。

「自分に利益をもたらすため、悪いことをしてもバレなければ問題ない」という考えの持ち主に匿名という環境はすばらしい環境になりうる。

数に限りがあるような、いわゆる転売のターゲットになりやすい物品の販売は評価や販売者がわかりやすい形にならないとそういう流れが止まることはないだろう。

例C、結末

例c)Zさんは初めてカタンを遊ぶ。ひたすらふっかけられまくったのでまともに取引できず最下位だった。

こんなことになったらZさんはこの後カタンを二度とやらないのではないか。いないものとして扱われるのが楽しいという人はほとんどいないだろう。

消費者としても扱われない人間はやがて興味を喪失する。転売屋だらけになった状態で起きるのはファンの減少や購入を諦めること、そして機会の損失だ。販売者、消費者という関係に割り込んでくる時、それによって起きる問題への責任を彼らは持つことを絶対にしない。

 

ここまでおおむねチケットについて書いてきたが他のものにも言えるはず。

 

さて、入手機会の提供というのは悪ではないと私は考えているけれど、その機会が誰かから奪って手に入れたものだとしたら考えものである。自分で盗んできた盗品を売ることはどろぼうよりもタチが悪い。

さて、チケット転売禁止法が施行されたが彼らが行っている行為を防いでいるようにはいまいち見えない。彼らがマーケットから姿を消したとしてもそれはLINEグループなどクローズドな場所に移動しただけのことであり、今日もどこかでチケットの買い占め、物品の買い占めが発生している。

「自分に利益をもたらすため、悪いことをしてもバレなければ問題ない」という考えは、結局の所自分への利益誘導に他ならない。

自分だけよければそれでいい、という自己への利益誘導が行き着く先は暴力的な搾取を経由して万人による万人の闘争にたどり着くと考えている。全体のために、という振る舞いをすることは自分も利益を享受する中に含まれるだろうけど、「自分だけのため」よりは幾分かましだと思う。

最近起きている汚職やつまらないニュースは「自分だけよければ」という気持ちから起きているよう感じられる。もうちょっとはみ出して「多くの人のために」という考えを持って行動してもらう事を、彼らに期待したい。それを見て自分もそうならないよう気をつけなければならない。

 

引き合いに出したカタンは、足の引っ張り合いをするよりも協力をうまく行うことで有利になるよう出来ている。そういうシステムのほうが少なくとも世界中で愛されるようである。

 

カタンがまるで悪の取引ゲームみたいになっちゃってますが…たのしい戦略ゲームです。
楽しい身内とあそんでくださいね。子供が社会性を学ぶのにもいいそう。

 

カタン | ボードゲーム・テーブルゲーム | ホビー | おもちゃホビー | 通販ショップの駿河屋

 

参考:

Ticketmasterは、人気公演のチケットの「公式オークション販売」を実施。オークションで価格が跳ね上がっても、価格に応じた手数料をアーティストや興行主が受け取れるという

チケット高額転売問題、解決策は「いろいろある」 津田大介さん・福井健策さんの見方
「チケット高額転売に反対します」――著名なアーティストが名を連ねたこんな声明が話題に。深刻化する“ネットダフ屋”による高額転売に、どう対処すればよいか。津田大介さんと福井健策さんが語り合った。