開催200回を迎えた東京ハースストーンたまり場のここがすごい

イベントレポート

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東京は下北沢、駅を出て徒歩4分。
ランチタイムから営業しているカフェ&ライブバー《ArkBox》ではアコースティックギターライブ、カードゲーム交流会や演劇といった多種多様なイベントが開催されている。

木曜日の夜になると、デジタルカードゲーム《ハースストーン – Hearthstone》のプレイヤーたちが下北沢駅に降り立つ。

《ArkBox》で毎週木曜の夜に開かれる《東京ハースストーンたまり場》に参加するためだ。

《東京ハースストーンたまり場》は2015年12月17日に第一回が開催。毎週木曜日の夜に開催されることが決まって以降、当時の開催店舗が閉店となり現在の《ArkBox》に開催地を移してからも毎週木曜日の夜に《東京ハースストーンたまり場》は開催され続けてきた。

そして2019年11月8日の《東京ハースストーンたまり場》はなんと通算200回目の開催を迎えることとなった。

 

本記事では実際に参加して見えたその模様をレポートという形でお伝えしていきたい。

 

 

《東京ハースストーンたまり場》という場所

 

毎週木曜日、お店の都合によって開催曜日がずれたりもしたがほぼ毎週休むことなく《東京ハースストーンたまり場》(以降:たまり場)は開催されてきた。

 

《たまり場》は、ハースストーンのオフラインイベント《炉端の集い》と呼ばれるものとしては非常に珍しく、参加するために事前の予約や参加表明をする必要がない。

他の会場と違い、「通常営業の中で炉端が開催されており、その日はハースストーンプレイヤーが多く集う日」という特殊なスタイルになっているので、来場して1オーダー以上を頼めばこの《東京ハースストーンたまり場》を誰でも楽しむことができる。

同様のイベントの大半が予約が必須、というところが多い。その中では気軽に参加しやすいはずだ。

 

 

そして「参加」というより「来場」というのが感覚的にはしっくりくる。店の扉を開けば店長、お店のオーナー、スタッフさんが迎えてくれる。店内にはハースストーンをしているお客さんも、店内にあるボードゲームに夢中なお客さんもいる。

《ハースストーンたまり場》だから…とハースストーン以外の事をしてはならないなんてことはない。そういう気楽さ、寛容さが漂っている。

 

参加者とはもちろんハースストーンの話ができるし、デッキについて相談している人も、プレイングについて熱く語り合っている人もいる。レジェンドに到達したプレイヤーや世界大会に出場するプレイヤーもその場にいることも。しかしそこにいる人々はベクトルも度合いも様々だがハースストーンが好きな事は共通するはずだ。彼らはハースストーンを今日始めた初心者であっても暖かく歓迎してくれるだろう。

 

「ハースストーンにおける強いプレイヤー」ではなくても楽しめる仕掛けがたくさん用意してあるのもポイントだ。ハースストーンお絵かき大会(カードの絵を何も見ずに描いて当てる。うますぎるとペナルティ。”画伯”がよく誕生する)、Google再翻訳クイズ(どこかの国の言葉に翻訳>さらに日本語に翻訳されたカードの名前や書いてある内容を当てる)などが参加者によって開催されることも。

いずれも「やりませんかー!」と声がかかった時に自由に参加する形なので、もちろんハースストーンでガチガチの対戦を続けていても問題ない。こういった強さではなく愛や絵心が試される催しも状況によって開かれたり、開かれなかったりする。毎回何が起こるかわからない、というのも面白いところ。

 

ハースストーンお絵かき大会で描かれたもの。答え付き

 

 

料理は《たまり場》メニューとして、ハースストーンのカードたちを意識したものが用意されている。カードイメージのカクテルも即興で作ってもらうことができる。

もともとがカフェバーなので料理はどれも美味しい。帝国ホテルの元料理人のお客さんを唸らせるレベルのものになっている。(実は通常営業中でも注文できる場合もあるので要確認)

料理やお酒を楽しむのもここの楽しみの一つだ。カードカクテルはぜひTwitterやInstagramにアップロードしてみて欲しい。映えること間違いなしだ。

 

毎週夜に開かれている《たまり場》だからこそ、仕事や学業の後にふらりと立ち寄ることもできる。「このイベントは絶対に楽しむぞ……」と満足度のハードルを高く設定して身構える必要はない。

今週も来週もやっているということは行けなくてもまた来週参加のチャンスがあるということでもあるからだ。安心してリラックスしながら《炉端の集い》の雰囲気やハースストーンを楽しめる場所になっている。

 

人恋しい、うまい飯が食べたい、なんとなく暇…そんな時に木曜夜、《たまり場》へなんとなく向かえば誰かがハースストーンをしている。そうやって人が集まってくる。飲み食いしながらお客やお店の人と楽しいひとときを過ごせる。

まさしくこの空間は《たまり場》というのがふさわしい場所でもあり、まさに「魔法のカードゲーム「ハースストーン」で遊ぶ冒険者が集まる酒場」…ハースストーンの世界観そのものを実現できている場所の一つが《東京ハースストーンたまり場》なのだ。

 

《東京ハースストーンたまり場》の歴史

そんな《たまり場》の第一回は、2015年12月17日、《AKIBAトイ&ラウンジ》(現在は閉店)において開催された。Hogei氏が「そこに行けば誰かしらハースストーンプレイヤーがいて気軽に楽しめる場所があったらいいな」と開催の呼びかけを行ったのがきっかけだった。

2017年5月21日、《AKIBAトイ&ラウンジ》が惜しまれつつも閉店したが、それに伴い現在の《ArkBox》に開催地を移転。ほぼ毎週休むことなく木曜日夜は《たまり場》が開催されてきた。

 

 

少し昔話をしたい。

 

玩具の属性をイメージしたカクテル

2016年末ごろ、当時とは名義が違うのだが筆者は下北沢のカフェバーである《ArkBox》で玩具を遊ぶイベントを開催させていただいていた。

その宣伝チラシを置かせてもらいに《AKIBAトイ&ラウンジ》を訪ねたその日が《たまり場》が開かれる木曜日だった。会場にいたHogei氏にそのイベント内容を紹介した所、なんとHogei氏はイベント当日《ArkBox》に来店してくれたのだ。

《ArkBox》は非常にフットワークが軽く、イベント開催にも協力的なお店である。イベントのキャラクターをイメージしたフードメニューやドリンクも用意してくれる。

このときのご縁が《ArkBox》での《たまり場》開催のきっかけだったのだろうか……と一連の流れを思い出すとき、私は当時の活動を終了したが先に続いていくものはあるのだ、と温かい気持ちになる。

話を戻そう。

 

 

「《たまり場》は参加者のみんなで作り上げた空間です」

開催を呼びかけ続けてきたHogei氏はそう何度も言葉にしてきた。Hogei氏は「酒場の主人」(《炉端の集い》を開く人のこと)として毎週会場に現れ様々な催しを行う。

しかし時間に合わせて会場に来れないときもあるし、《たまり場》にHogei氏が不在の日もある。それでも参加者たちは集まって《たまり場》でいつものようにハースストーンや開催する催しを楽しんで来た。

 

ゲストとしてやってきてそれで終わり……ではなく(それも悪くない)、《たまり場》を訪れた人は参加者の催しや歓迎を受けて楽しいと感じた時に、自分だけが楽しむだけではなく相手や他の参加者も楽しませたいと自然と考えてしまう何かがきっとここにはあるのだと思う。

他の参加者と楽しむため催しを行う人も、全力でハースストーンの対戦を楽しむ人もいる。それぞれが「楽しい」に自由に取り組めているからこそ盛り上がりも大きい。この自由さがゆるく心地良い空間を作ることになり、リピーターの多さにもつながっているのだろう。

開催店舗のスタッフ、参加者の人々、そしてHogei氏のハースストーンへの愛情、そして自由さがこの《たまり場》のハースストーンの世界観…冒険者の酒場のような空気感につながっている。

 

そろそろ4周年を迎えることになる《たまり場》。こういったオフラインイベントが200回も開催されるということはたやすいことではない。それを実現するにあたって強みになったのはそういった要素かもしれない。

現場の雰囲気をレポート!

 

この日は《ハースストーンバトルグラウンド》という新モードの早期アクセス期間が開始されて間もないころだった。

《ハースストーンバトルグラウンド》は先行ベータの段階で非常に楽しめるものであり《たまり場》はプレイする人々で大盛況だった。デッキ資産もいらないため、遊びやすくリプレイ性が高い。これからも色々な形でハースストーンを楽しめるコンテンツが生まれるだろうと思うとわくわくする。

さて、お店に人が集まり始めた段階では《ハースストーンバトルグラウンド》を遊んでいる方がちらほらいた。プレイしている人を見て自分もやりたくなって開始する、そういう人がたくさんいたため《ハースストーンバトルグラウンド》をプレイしている人がどんどん多くなっていった。

見ていると自分もやりたくなる、という感覚は著者自身もハースストーンプレイヤーであるので非常にわかるものだった。

 

会場から「やっぱメカなんだよなー!」といった嘆きに近いような叫びが上がるたび笑いが起きていた。《ハースストーンバトルグラウンド》は「メカ」を持ったミニオンが安定して強いため非常に人気が高く、「メカ」ミニオンを選んで強化していく人が多かったのだ。

 

これは初期に大暴れしたカードに描かれている”トログ”が狩ってきた獲物の肉っぽい、頭わるい感じの豪快な丼ぶりという設定「トログ丼」。ワイルドにかぶりつけ!

 

そして「トログ丼」が大量に注文された結果、この日の「獲物の肉」(普段はチキンが多いが日により変わる)に相当するローストポークの在庫が「絶滅」してしまったりと、参加者はフードやドリンクを楽しみながらハースストーンやボードゲームを遊んで盛り上がっていた。

そんな中、著者も参加者として楽しみながら参加者にインタビューとしてお話を伺ってみたのでその声を聞いてもらいたい。店内の雰囲気が伝わる事間違いなしだ。

 

ーーたまり場カップを優勝した方
(たまり場カップとは、勝敗を決める方法がハースストーンじゃなくてもいいという自由なトーナメントの催し。優勝すると名誉がもらえる。)

「凍てつく玉座の騎士団のころにハースストーンを始めました。最初に行った”炉端”は西東京炉端でした。新規さんにやさしい!ハースストーンのオフラインイベントは楽しい!と感じられるものだったので、次の炉端はどこだろう?とTwitterで検索してHogeiさんのアカウントからここにたどり着きました。」

「ここは予約いらないし、自由に来れるのが手軽でいいですね、駅からのアクセスもいいです。なにより店員さんの雰囲気がいい。堅苦しくないし、週1なのもすばらしいですね。リピーターが多いのも頷けます。」

「こういうデッキが良いよね、ここが強いよね、という会話を同じヒーローを使う人と話ができるんです。これはオフラインでしかできないやりとりだ!と感動しました。《たまり場》に来て、お客さんと話をして自分の使ってるヒーローへの愛が深まったのがすごく面白かったです

 

ーー《ハースストーンバトルグラウンド》をプレイしている方

「ここに初めて来たのは”妖の森ウィッチウッド”の頃です。ハースストーンを初めてすぐでしたが《たまり場》の存在を知ってこれは面白そうだと。《たまり場》は上手い人ばかりのイメージがあったので…初心者が行ってもカードや環境の話ばっかりでついていけないんじゃないかな、と思っていたんです。だからランクがレジェンドに到達したら《たまり場》に行こう!と思って当時めちゃくちゃ強かった「偶数パラディン」を使ってレジェンドにはすぐ行けました」

「それでようやく行けた《たまり場》だったんですが、レジェンド行ってないひともたくさんいた。早めに来たほうが正解だな…と思いましたね。それまでずっと一人でハースストーンというものをやってたんです。引きが悪くてマウス投げたりもしました。でも《たまり場》に来て、色々なものが変わりましたね…。

 

「まず、フレンドが30人増えました(笑)実況配信の画面の向こう側にいる人と隣で戦える。有名プレイヤーと対戦したり、フレンドになってもらえた。その時は嬉しくて震えが止まりませんでした。」

プレイスタイルも変わりました。数値化しにくいアドバンテージを意識するようになったりと考え方が変わりました。実際の他のプレイヤーとお話することで目に見えないアドバンテージとか役に立つ概念を学ぶ事ができました。配信とは得るものが全然違うな、とびっくりしました……。」

「それから、視野が広がった。全く分からないものもあったけど、いろんな概念や考え方に触れることが出来たら自分の考え方も広がったんです。ハースストーンをもっと楽しむことができるようになったと思いますね

 

 

ーーインタビューをしていると貴重な意見が沢山聞ける、やはりここはハースストーンをするだけの場所では決してない、それ以上の価値がある場所だ…と頷いていると、カウンターの中にいるオーナーの進藤キーチさんから店内に声がかかった。

なんと通算開催200回を記念して、《ArkBox》からケーキがHogei氏と《たまり場》に贈られた。参加者のつたやオンラインさん、ヤンダさんらが監修、プレートは同じく参加者のにゅーさんきんさんが描いたイラストが印刷されているという“レジェンド”仕様だ。(ケーキもプレートも20分割されて店内全員でおいしくいただいた)

ケーキには火のついたろうそくが灯っていた。

参加者たちは「Hogeiさんに!」「Hogeiさん消して!」と口を揃えて言うのだが、Hogei氏は「みんなで作った《たまり場》なので、みんなで消しましょう!」と答えた。

《たまり場》の象徴的なシーンだな……と思うと少し目頭が熱くなるのを感じてしまった。

「それぞれ息を吹きかけて消すのは嫌な人もいますよね……」と皆に気を遣っているHogei氏に、「手を叩いて…パンっとすれば消せますよ」と誰かが言った。

おのおの手を叩いて火を消していく様子が、まるで参加者たちが《たまり場》を称えて拍手をしているよう目に写ったのがとても印象深い。

デジタルカードゲームを目の前の人と遊ぶという体験はゲームをするだけではなくそれ以上のものを生み出す。その一つが拍手で巨大なケーキの火を消す光景であり、《たまり場》を作ってきた人と人のつながりもそのうちの一つなのだろう。

 

「ここは特別なイベントの会場ではなく、日常や生活に近いところとして気軽に立ち寄れる場所であってほしい」「来るのも帰るのも、どう過ごすかも自由でいてほしい」

これらは後日、Hogei氏に《たまり場》への想いをたずねた時の言葉だ。

それを聞いて思わずなるほど、と声が出てしまった。《たまり場》を大切にしてきた人たちなら共感できる想いのはずだ。この願いを自然な形で実現しているのが《たまり場》の人々なのかもしれない。

日常の延長線上にあるから生まれる自由さや、人同士の交流が作る和やかな雰囲気の心地よさというのは、暖炉のそばにいるときの暖かさに似ていると感じた。

 

まるで暖炉のある酒場のような心の暖かさを感じることができる《東京ハースストーンたまり場》の「ハースストーンらしさ」は世界でもトップクラスではないだろうか。

もし機会があれば、ハースストーンの開発をしているBlizzard社の関係者や、ハースストーンの元ゲームデザイナー、ベン・ブロードにこの《たまり場》の様子を見てもらいたいと思う。きっと彼らは好きなカードのイメージカクテルを片手に泣いて喜ぶような気がしてならない。

 

毎週木曜夜、下北沢《ArkBox》で酒場の主人と冒険者たち、それと美味しい料理があなたを待っているはずだ。

 

文:赤雪すずみ

 

最新情報・開催に関する情報はHogei氏のTwitterをチェック!

Hogei氏のTwitter https://twitter.com/Hogei1256

東京ハースストーンたまり場のHP http://hszoo.webcrow.jp/tournament/Weekly.htm

ArkBox のTwitter https://twitter.com/Ark_Box